松の盆栽

松浦 貴昌のパーソナルブログ

「U理論」の入門をさらに超ざっくりまとめてみました

『U理論』。初めて知ったときに、私が思ったことは「仏教の教えと近い」ということでした。「自分の心を味わう」「真我とつながる」。そんな表現で言われていることと、U理論に共通点を見ていたのです。今回はその「U理論」について少し。

 

英治出版から出版されているオットー シャーマー著『U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』は、608ページもある分厚い書籍となっています。そこで、尻込みをしつつ、中土井僚さん著の『人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門』を手に取るとこれが429ページ・・・。「じゃあ、今度、時間があるときにでも~」なんて後回しにしている方も多いと思います。それでは、勿体ない!ということで、そのU理論入門を、向学のためにもさらに私がざっくりと短くまとめることに挑戦しました。(プレゼンシングまで)素晴らしい理論なので、これで少しでも興味を持ってくださる方が増えると嬉しいなぁと思っています。


※以下の文章は、『U理論入門』で書いてあることだけでなく、松浦の個人的な勝手な解釈や例もかなり入れてまとめています。また引用するかたちもとっていないので、詳しく知りたい方はぜひ書籍や講座を。 

 

U理論とは?

個人の変容や組織のイノベーションのための理論に「U理論」というものがあります。このイノベーションとは何かというと、過去の延長線上にないものを生み出すこと。それを、個人だけでなく、組織や社会でも使える、新しい解決策を生み出すためのプロセスを明らかにしています。それも、指示命令形でなく、チーム一枚岩となってイノベーションを起こすことが、どうしたら可能になるかを示しています。

 

U理論とは、MIT上級講師のオットー・シャーマー博士が世界の多様なトップリーダー達130名にインタビューし、紡ぎ出された理論です。特徴的なのは、リーダーの「やり方(Doing)」に着目するのではなく、リーダーの「あり方(Being)」に着目している点です。人間が、高度なパフォーマンスを発揮し、変革が起こっている時には、内側で「意識の変容」が起こっているというのです。

 

変容を起こすための心構え

現在の世の中は、複雑性が高く、予測の難しい課題に満ちています。こういった課題を解決し、ありたい変容を起こすためには、必要な心構えがあります。それは、非常にあいまい且つ不確実な状況を許容し、失敗を恐れないことと、不可能だと思われることを試みる覚悟です。そして、「何をどうやるか?」ではなく、「その行動をどこからやるのか?」ということです。「どこから」というのは、行動の基点にあたるもので、一つの答えは「源(ソース)を基点にやる」ということになります。源(ソース)を基点に行動しているトップリーダーの共通点として、どんな場面でも「何者としてその場にいるのか?」という「あり方」が体現されているということがあげられます。※後段で、私は、源(ソース)=「本来の自分」とらえています。

 

U理論の3つのプロセス「センシング、プレゼンシング、クリエイティング」

U理論を大きな3つのプロセスに分けると1.センシング、2.プレゼンシング、3.クリエイティングになります。センシングは、「ただ、ひたすら観察する」、プレゼンシングは、「一歩下がって、内省する。内なる知(ノウイング)が現れるに任せる」、クリエイティングは、「素早く、即興的に行動に移す」となります。

このプロセスを文章としてまとめると、「先入観を排し、ただひたすら観察し続けることを通して、行動の基点を源(ソース)に転換していきます。そして、自分自身を通して、出現しようとしている未来(=知っているもの)を迎え入れ、それを具現化、実体化しいく」というプロセスです。

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それでは、このプロセスの第一関門であるセンシング(観察)からプレゼンシングまでを、ポイントを絞ってまとめたいと思います。まず、先入観を排し「観察」をするためには、「過去の経験によって培われた枠組み」を取り払わねばなりません。私たちはこの過去の枠組みから物事をとらえていくので、ありのまま事実をとらえることができなくなり、否定や思考停止などが起こり、不毛な議論や対立に発展していきます。この「過去の経験によって培われた枠組み」こそ、イノベーションや変容の足かせといってもいいでしょう。

 

例えば、初めて会った人と話している時、自分の頭の中で、「ああ、この人はこういう人だなぁ」と興味を失うことがあったとします。この時、過去にできた自分の枠から目の前の人を判断し、レッテル貼りをしている可能性があります。こういったことを私たちは無自覚に多くやっています。こういった認知機能は、生存本能を満たすための脳の機能ではあるのですが、これがあるために足かせにもなっているわけです。他者から「思い込みが激しい」「頭が固い」「頑固」などと言われたことがある人は、改めて考えてみるといいかもしれません。(ここで注意が必要なのは、「過去の経験によって培われた枠組み」が駄目だと言っているわけではなく、その過去の枠組みに「囚われている状態は変容が起きにくい」ということです。)


もう一つ例を使って考えてみましょう。例えば、人と話す時に緊張してしまう人がいるとします。その人の心の声に「どうせ、わかってもらえない」という諦めがあると、話す相手のことをフラットに見ることができず、「この人はわかってもらえない人」というレッテルを貼り、話すことになります。そして、わかってもらえない証拠を相手の言動に見つけ、「ほら、やっぱり、わかってもらない・・・」という諦めの思い込みを強化します。こうやって、ネガティブな思考の渦に巻き込まれていくのです。

 

人は、過去の枠に囚われている状態だと、現実認識が歪み、事実と解釈を混同し、解釈を現実として扱ってしまうことがしばしば起こってしまいます。そうすると、本来持っているパフォーマンスが発揮できません。先ほどの例でも、「どうせ、わかってもらえない」という思い込みがなければ、緊張せず、普通に話ができるはずなのです。この過去の枠であり、思い込みのことを「メンタルモデル」と言います。

 

メンタルモデルを見つけてみる

この思い込み(メンタルモデル)を解消するにはどうしたらいいのか気になるところだと思います。これは、実はシンプルで難しくもあるステップが2つあります。第一段階は、その思い込みや囚われていることに「気づく(アウェアネス)」ことです。これで、メンタルモデルの半分は解消されるともいわれています。自分を俯瞰しているもう一人のメタな自分を置いて、心に起こっている動きや体感に意識を向けると気づきやすいと思います。頭が熱くなったり、胸がぎゅっとなったり、呼吸が浅くなったりと体感で気づくことができます。

 

とくにメンタルモデルがわかりやすい瞬間というのは、他者と関わる中で、「カチン」ときて反応したり、「イライラ」した瞬間です。また、もう一つのヒントとしては、過去から繰り返し起こっている不本意なパターンがないか?を見つめてみると浮かびあがってきます。そして、こういった瞬間に自分の心の声に耳を傾けるのです。おそらくは、相手を責めたり、自己正当化したり、自分を責めたり、卑下したりしていることが多いはずです。中には「こうあるべき」「こうしなければならない」と心の声が言っているかもしれません。こういったメンタルモデルの多くは、「自分は欠損している」「足りていない」などとという思い込みから来ている場合が多くあります。

 

評価・ジャッジ、決めつけなどを一旦「保留」にする

それでは、そういった自分に気づいた後はどうすればいいか。これが二段階目になります。それは「保留」することです。相手を評価・ジャッジ、レッテル貼りしている自分に気づき、正しい・間違っているなどの結論や決めつけを一旦「保留」することです。どこにも着地できない居心地の悪さに身を置き続けることになりますが、それに耐え、能動的に味わうことになります。「待つ」ことともいえます。また、この気づきと保留のプロセスを続けていると、驚きのセンスがあがり、好奇心旺盛で、柔軟な人になっていき、コミュニケーションの質が高まるといわれています。

 

他者の目玉から見て、器を拡張させる

さて、これまでのステップで、ようやく頭の中の雑念に意識を奪われず、目の前の事象や状況に意識の矛先を向けられるようになってきました。そうすると、これまでは過去の枠組みのせいで見えなかったものが、見えてくるようになってきます。他のイメージでお伝えすると、「自分の中に他者の目玉が増える」イメージです。相手を受け入れている状態なので、「○○さんの気持ちがわかった」という実感があるかもしれません。自分の枠が壊れ、器が拡張しています。そうなれば、もう、力でねじ伏せようしたり、自分の主張を飲ませるよう説得する必要がなくなるのです。また、他者のストーリーテリングを聴くことは、他者の人生の追体験をすることであり、他者の目玉が増えるエクササイズだと思っています。

 

Uの谷の「プレゼンシング」

最後は、「U」の谷の部分の「プレゼンシング」についてです。ここでは、創造性を引き出す、根源的な問いが出てきます。それは、「私は何者なのか?また、私の成すことは何か?」ということです。自我(エゴ)や習慣的な「自己」を捨て去り、より高い次元の「自己」とつながります。この自己を「本来の自分(オーセンティックセルフ)」などといいます。この本来の自分とつながり、発せられる言葉は、共振するかのように他の人に響くといわれています。この「本来の自分」とつながり、行動を起こすことで生まれるものがイノベーションであり、変容ということになります。

オットー博士は、この「プレゼンシング」について、「未来が出現する」と表現しており、過去の延長線上にはない、全く新しい可能性を迎えるターニングポイントとなる瞬間といえます。また、この「未来が出現する」前には、不安や怖れに襲われながら、先の見えない虚空に一歩踏み出す勇気が必要となるともいわれています。さぁ、勇気を出して新しい未来を迎えに行きましょう!

 

以上、プレゼンシングまでのところをざっくりとまとめましたが、ここまでが最初の難所であり、かなりポイントになるところだと思い、まとめてみました。お役に立てれば幸いです。

 

U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

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  • 作者: C オットーシャーマー,C Otto Scharmer,中土井僚,由佐美加子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
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