松の盆栽

松浦 貴昌のパーソナルブログ

改めて確認したい日本国憲法の成り立ちと平和主義

 日本国憲法が施行されてから70年。その節目に、NHKスペシャルで「憲法70年  "平和国家"はこうして生まれた」という特集が放送されていました。

 ちょうど良い機会と思い、いくつかの過去の番組内容と少し自分で調べたことも足して、憲法の「平和主義」がどのようにして生まれたのかをまとめたいと思います。

 ただ、少し長いので、簡単に要約したものを先に書いておきます。

 戦後すぐ、昭和天皇が「平和国家」を希求し、幣原(しではら)首相がマッカーサーに会って、天皇制の維持と「戦争の放棄」を提案。それに感動したマッカーサーは、日本政府の草案を待つも、出てきた草案は天皇を中心とする君主主義のまま・・・。こりゃ、GHQでたたき案を出したほうが早いし、連合国の「極東委員会」の管理下になる前に進めておきたいので、1週間でGHQ草案を作成。(日本人の有識者が集まった「憲法研究会」の草案も大変参考にした。)

 日本政府も急いで、GHQ草案を検討し「帝国憲法改正案」を作成。帝国憲法改正案委員小委員会で、中身を喧々がくがく議論。第25条の生存権。第26条の義務教育の中学までの延長。そして第9条の「平和」の文言などを追加。

 外務省が国際法規を尊重するよう求め、憲法第9条の冒頭の条文「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」が加わり、9条の平和主義が誕生。日本国憲法が公布される。という流れです。

 

■戦後すぐに「平和国家」の建設を希求した昭和天皇

 敗戦から間もない1945年(昭和20年)9月2日、日本は東京湾上のアメリカ戦艦ミズーリにて降伏文書に調印しました。

 そして、その2日後の9月4日、戦後最初の国会を昭和天皇が召集し、天皇は開院にあたって自ら勅語を読み上げます。

「平和国家を確立して、人類の文化に寄与せんことをこいねがう」

 この時に新たな日本の建設に向けて初めて「平和国家」が掲げられたのです。

 この勅語はできあがるまで極秘の草案として、何度も修正が繰り返され、第4案までになりました。ここで、「平和的新日本を建設」と書き加えた人物が、戦後最初の首相となった皇族の東久邇宮稔彦(ひがしくにのみや なるひこ)首相です。

 東久邇宮首相は、この勅語が示された同じ国会で以下のように演説しています。

「潔く自ら誓約せる、ポツダム宣言を誠実に履行し、誓って信義を世界に示さん」

 このように、日本がポツダム宣言に従って、非軍事化、民主化を進める事を強調しようとしたのです。

 その後の9月15日、文部省は「平和国家の建設」を柱とする「新日本建設の教育方針」を発表し、教育現場の大きな方針となりました。

 9月25日、従軍記者だったフランク・クルックホーンが、外国人では戦後初めて天皇と会見します。その事前質問に対する昭和天皇の英文の回答文書が宮内庁に残されていました。

「恒久平和は銃剣を突きつけて確立することはできない。平和の問題を解決するのは、自由な諸国民の非武装による和解である」

 そして、その会見の2日後の9月27日、昭和天皇はマッカーサーを訪ね、「平和の基礎の上に新日本を建設する」事を伝えました。そこで天皇が占領政策に協力する事を確認したマッカーサーは、日本政府に憲法改正を促していく事になります。

 また、このとき天皇は「全ての責任は私にある」といい、その言葉に感動したマッカーサーは、密かに天皇の擁護を決意したといわれています。

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■「戦争の放棄」を提案したのは、幣原首相

 10月9日、新たな首相に幣原喜重郎(しではら きじゅうろう)が選ばれ、幣原は内閣に「憲法問題調査委員会」を設置します。

 翌1946年1月24日、東京裁判の開廷を前に昭和天皇の戦争責任を追及する声が国際社会にあることを受けて、幣原首相はGHQのマッカーサーを訪ねます。

 この会談で幣原は、通訳もつけず2人で3時間にわたって話し込みました。このときの会談の内容を幣原の友人が聞き、娘がそれを書き残した「羽室メモ」が残されています。以下はそのやりとりの内容です。

 幣原がマッカーサーに切り出します。
 「どうしても天皇制を維持させたいと思うが協力してくれるか」。

 マッカーサーが答えます。
 「一発の銃声もなく一滴の血も流さず進駐出来たのは、全く日本の天皇の力による事が大きい。できるだけのことは協力したい」

 幣原が提案します。
 「戦争を放棄するという様な事をハッキリと世界に声明する事。それだけが日本を信用してもらえる唯一のほこりとなる事じゃないだろうか」

 このとき、幣原が提案したのが「戦争の放棄」でした。

 マッカーサーと幣原、「大いに二人は共鳴した」と記されています。

 天皇制を守ろうとした幣原。戦争放棄の提案については次のように書き残しています。

「国民が子々孫々その総意に反して戦争の渦中に引き込まれるが如きことなきよう」

 一方、マッカーサーも書簡で以下のように書き残しています。

「戦争を禁止する条項を憲法に入れるようにという提案は幣原総理が行ったのです。私は総理の提案に驚きましたが、私も心から賛成であると言うと、総理は明らかに安堵の表情を示され私を感動させました。」

 また、マッカーサーは1月25日にワシントンに長い電報を送っています。

「天皇を戦犯として裁判にかけるべきではない。天皇は日本国民の象徴として考えるべきだ」という内容です。その裏には天皇の責任を問うオーストラリアなどの圧力がありました。

 しかし、2月1日、国体護持を推進していた松本国務大臣をはじめ政府が作成を進めていた憲法改正案が毎日新聞にスクープされ、そこには天皇を中心とする君主主義がそのまま認められていました。

 GHQは直ちに条文を分析し「天皇の行為が制限されていない」「極めて保守的」と批判し、マッカーサーはGHQが憲法の草案を作成する事を決断します。

 マッカーサーが急いだ背景には、連合国の日本占領の最高機関として2月下旬に発足しGHQを管理する事になっていた「極東委員会(連合国11カ国参加)」の存在があります。極東委員会にはソビエトやオーストラリア、中国など天皇制に厳しい意見を持つ国も加わっていました。

 2月3日、マッカーサーは新たな憲法の基本原則を自ら示します。いわゆる「マッカーサー・ノート」です。

 ここでマッカーサーは、その後の憲法9条につながる「戦争の廃止」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を打ち出します。さらに、「自己の安全を保持するための」戦争、つまり自衛戦争を否定しました。

 そして、マッカーサーはGHQ民政局に1週間で憲法草案を作成するよう命じます。

 ただ、その前からマイロ・ラウエルを中心としたGHQ民政局は、当時の進歩的な日本人の学者、評論家、ジャーナリストらで結成した「憲法研究会(1945年11月結成)」による草案の詳細な分析を前もって行っていました。

 ちなみに草案づくりの中心となったGHQ民政局員25人の中には、少女時代(5歳~15歳)に日本で育ったベアテ・シロタ・ゴードンもいて、戦前の日本の生活も踏まえられました。ベアテは翻訳、通訳としても活躍します。

 戦争放棄の条文を担当したチャールズ・ケーディスは、自衛戦争を否定した箇所を削除し、その理由を生前カメラの前で証言しています。

「どんな国であれ自衛の権利は本来的に持っていて当然のものです。自国が攻撃されたら自分で守る権利を否定するのは非現実的だと思ったのです」

「そして、"紛争解決の手段としての武力による威嚇は放棄する"という部分を加えました。」

 ケーディスによる修正で「武力による威嚇または武力の行使は、永久に放棄する」とされ、侵略戦争を明確に否定したのです。これは国連憲章から引用しています。

 2月12日、GHQ草案が完成し、多くの人権規定が盛り込まれ、天皇は「象徴(Symbol)」とされました。その後、日本政府はGHQ草案を受け入れ、条文を検討し「帝国憲法改正案」の作成が進められる事になります。(3月6日に「憲法改正草案要綱」発表)

 4月、戦後初の総選挙(女性を含む)が行われ吉田茂が首相となります。
 GHQ草案を基に「帝国憲法改正案」が作られ、条文についていよいよ衆議院で審議が始まろうとしていました。

 

■そして「国際平和」の文言が加わる

 1946年(昭和21年)7月25日、国会で帝国憲法改正案委員小委員会が始まります。
小委員会の議員は各政党から法律の専門家である14人が集まり、およそ1ヶ月にわたって憲法の条文を巡り議論を戦わせました。

 秘密会だったその記録は戦後50年間を経て速記録が公開され、日本人の手で多くの条文が追加修正された事が分かりました。第25条の生存権。第26条の義務教育の中学までの延長。そして第9条の「平和」の文言です。最低限度の生活を保障した「生存権」については、GHQ草案にも影響与えた憲法研究会の有識者でもあった森戸辰男が提案しました。

 9条の「平和」について盛り込むことを提言したのは日本社会党の鈴木義男です。そこには第一次世界大戦後のヨーロッパとアメリカの留学体験から国際協調と戦争を違法化する新しい考え方を学んだことと、軍国主義から第二次世界大戦を防げなかった反省があります。

 その鈴木の提案を、戦前軍部を批判するなどリベラルな政治家として知られていた芦田均委員長が受けとめ、そして外務省の資料を持ち出しました。

 外務省は、憲法の修正が及ぼす国際的な影響と、国際法規は憲法と共に尊重するよう求めていました。資料には「条約」「国際法規」に加え鉛筆で「これを誠実に」「遵守する」事が記されおり、これを受けて憲法第98条に以下の第二項が追加されます。

「第二項 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」

 さらに小委員会では、芦田委員長がこの外務省の資料を9条の修正に生かそうとし、党派を超えて次々に条文の提案が出されました。

 2日後の7月29日、再開された小委員会の冒頭で芦田委員長が一つの案を示し、第9条の冒頭の条文「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」が加わり、憲法9条の平和主義が誕生しました。

 それは国際連合へと歩み始めた世界の動きを見据え、日本が積極的に平和を担おうとする考え方から生まれたものでした。

 以下は現行でもある憲法9条の条文です。

「第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 

第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。 国の交戦権は、これを認めない。」

 

 そして、1946年(昭和21年)11月3日、日本国憲法公布。
 「国民主権」「基本的人権の尊重」そして「平和主義」を掲げた新たな憲法ができあがります。

 鈴木義男は新憲法を解説した本で次のように述べています。

「憲法の一大特徴は、平和主義 国際協調主義を根本としている」

 以上のように、日本国憲法ができあがるプロセスをみていくと、昭和天皇や多くの日本人のおもいが詰まったものだということがわかると思います。また、そこには先の戦争への痛烈な反省と、自国だけでなく世界全体の平和を強く願ったものであることも忘れてはならないことだと思います。

 

 ↓NHKスペシャルで「憲法70年 "平和国家"はこうして生まれた」
 http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20170430

 そのほかにも「日本国憲法を生んだ密室の九日間」(朝日放送、1993年2月5日放送)、「NHKスペシャル 日本国憲法 誕生」(2007年4月29日放送)などを参照しています。

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学生なら「Amazon Student」で、書籍10%ポイントバックって知ってました?

今回は軽い記事ですが、大学生・大学院生(社会人含む)なら「Amazon Student」で、書籍購入時に10%がポイントバックされるって知ってました?

 

このサービス、消費者にとってはかなりいいサービスなんですが、出版業界としては、通常であれば新品の値引きがない業界のはずが、Amazonだけ実質値引きのようになってしまうという恐ろしいサービスでもあるんです。

 

「Amazon Student」の会員メリットはいくつかありますが、大きなメリットだけ言ってしまうとAmazonプライムを半額の1,900円/年で受けられて、書籍の定価の10%がポイントでバックされます。

 

Amazonプライムだけでも、お急ぎ便が使い放題だったり、プライムビデオで映画やTV番組をたくさん観ることができます。

 

それに加えて10%ポイントバック。今年の4月には期間限定のキャンペーンで15%ポイントバックになっていたので、実質、15%OFFということになります。

 

通常、新品の書籍に値引きはないので、Amazonだけすごいサービスをやっていることになるわけです。(この出版の制度には疑問もありますが)

 

しかも最大で4年間使えるようなので、学生の方はかなりお得だと思います。

 

とはいえ、Amazonに購入が集中してしまうと、街の小さな本屋さんが消えていくので、応援するつもりで、あえて街の本屋さんで買うこともおすすめします。また、「Amazon Student」でも雑誌・漫画はポイント対象外なので、これらだけでも書店で買うのもいいですね。

 

ということで、今回は軽めのお得な情報でした~。

 

www.amazon.co.jp

 

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「誰に合わせて授業するのか?」が難しい学校の現状と“ふきこぼれ”問題

今年、公立の小学校の教育実習をして、これは本当に難しい課題だ、と感じたことがあります。

それは、「誰に合わせて授業をするのか?」ということです。

 

今、公立の小学校は本当に多様な子ども達が一つの教室で学んでいます。1~2割の子ども達は、発達障害があったり、グレーゾーンの子ども達と言われています。こういった子達の中には、ただ椅子に座っていることが困難な子もいます。(昔の私です)

一方で、中学校から受験して、私学に行こうと進学系の塾に通っている子ども達も一定数います。この達は、学校よりも進んでいて、高度な勉強を塾でやっていたりします。習い事も多く、ピアノ、水泳などをやっていて、週に5~6日は習い事をやっている、なんて子も少なくありません。

その他にも外国籍やルーツのある子がいたり、とにかくいろいろな子達がいます。そんな多様な子達がいる中で、「誰に合わせて授業をするのか?」ということの問題提起と私が体験した現場感を共有できたらと思っています。

 

そのことを、たまたま、最近読んだ二冊の本がその問題を指摘していました。
 

一つは、『日本人なら知っておきたい 2020教育改革のキモ』という書籍で、フジテレビ「ホウドウキョク」というインターネットテレビの教育コーナーを書籍化したものです。 

日本人なら知っておきたい 2020教育改革のキモ

日本人なら知っておきたい 2020教育改革のキモ

  • 作者: フジテレビ「ホウドウキョク」
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2016/10/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

その書籍の序文でコメンテーターの鈴木款さんが仰っていることです。

長男の話でショックを受けたのは、学校と学習塾の授業レベルの差が大きいため、学校の授業中は退屈で寝ている子がたくさんいるという一言でした。

 

学習塾に通う生徒たちの間では、学校には遊びに行き、勉強は塾でするというのが一般的になっていたのです。

フジテレビ「ホウドウキョク」(2016)『2020教育改革のキモ』p.17 

 

この問題のことを「ふきこぼれ」というそうです。昔から授業についていけない学力の低い児童のことを「落ちこぼれ」と呼びました。私もこちら側の人間でした。一方で、今は、学力の高い児童で授業レベルが低いためにドロップアウトすることを、鍋から吹きこぼれるイメージから「ふきこぼれ」というのだそうです。

 

このことは、ちきりんさんの『自分の時間を取り戻そう』という書籍でも触れられていました。

自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方

自分の時間を取り戻そう―――ゆとりも成功も手に入れられるたった1つの考え方

 

 

時間もお金も有限かつ貴重なので、十分に報われると思えることに使いたい=お金や時間の生産性を最大限に高めたい。そう考えたとき、学びの場として今の学校の生産性はあまりにも低く見えます。


最大の理由は、個々人の理解レベルにまったく合わないペースで教えられているからでしょう。最低でも30人の生徒がいる教室では、一番よくわかっている子も一番わかっていない子も、自分の時間を有効活用できていません。


おそらく時間が有効活用できているのは、真ん中の10人ほどではないでしょうか。しかもその10人も、英語の授業時間は有効活用できているけれど、物理の授業ではまったく無駄に人生の時間を使っていたりするのです。

ちきりん(2016)『自分の時間を取り戻そう』p.35 

 

鈴木さんもちきりんさんも、それぞれイメージしている年代が違いそうですが、私が今年教育実習を経験した東京都内の公立の小学4年生のクラスでも同じことが起こっていました。


そのクラスも30名ちょっとくらいで、大きくは3つくらいの層に分けられます。一つは、授業の内容になかなかついていけない層。そしてもう一つは、進学系の塾に行っていて、授業内容よりももっと難しい問題が解け、塾で先に進んでしまっている層。そして、どちらにも入らない、進学系の塾は行っていなくて、学校の進み具合に合わせて学習を進行させている層。おそらくこの層が一番多いでしょう。


例えば、算数の計算問題をいくつか解くことを指示したとします。時間は全体で20分くらいを想定するくらいの分量。「はじめ~」の声と共に、まず3分で全ての問題が終わる子達がいます。そして、20分経っても終わらない子達もいます。これは実際に私が体験したことです。3分で終わった子達は本を読むなど、思い思いの過ごし方をしていました。先生は、苦手な子を中心に回って教えます。そのうちに、20分くらい経過し、8~9割くらいの児童が終わったあたりで、先生の答え合わせが始まるといった感じです。できていない1~2割の子は待ってもらえません。


これが私の体験した厳しい現実でした。そして、私自身、この時には、誰にとっても良いと思える方法が思い当たりませんでした。おそらく、一般的な公立小学校の先生が日々直面している難しい現実のように思います。(先生達はできる限りフォローしていると思いますが)


できる子には、簡単すぎて退屈で、できない子には難しすぎて、完全習得までいかずに理解できないままになってしまう現実。また、できる子は、先生からは放っておかれる事が多くなります。できない子は、勉強に苦手意識を持ったままになってしまいます。とくに算数は深刻で、一つわからなくなると、先の問題はほとんど発展させたものなので、それ以降もほとんどわからないという状態が続くことになってしまいます。


現在では、算数の少人数学級や追級指導など、落ちこぼれがでないよう対策が打たれていますが、それでも多くの学校でまだまだ足りていないのが現状ではないかと個人的には思います。

 

では、ふきこぼれ問題はどうでしょう。一般的に勉強できる子は優等生のイメージがあり、「いい子」で、ドラえもんのキャラでいうと出木杉くんを思い浮かべるのではないでしょうか。実際には、そういう子もいます。しかし、一方でそうではない子もいて、家ではいい子を演じていて、その抑圧を解放しようと学校では暴れてしまう子もいます。 授業が簡単すぎると、教室を出てしまう子もいます。塾でランク付けがされ、塾仲間からは見下されているので、学校では自分が他の児童を見下している子もいます。これらも実際に実習先の教室で目の当たりにした現状です。

 

では、どうすれば、いいのか?

本当は、考え続けながら、一つひとつの問題に向き合っていくことだと思っていますが、それで終わってしまうので、現状でできる事の一つとしては、「学び合いの授業」を導入することがあると思います。これは、児童・生徒同士で、わかっている人がわからない人を教えたりと、お互いに教え学びあい、サポートしあうことを重視した授業のやり方です。この学び合いの授業は、上越教育大学の西川 純教授が、多くの書籍を出されています。

クラスが元気になる! 『学び合い』スタートブック

クラスが元気になる! 『学び合い』スタートブック

 

 

この授業のやり方は、クラスの結束も強くし、関係性もよくするので、とても有効なことだと思います。一方で指導法としての難易度も高いので、できる教師が限られるのが今の現状だと思います。(教職課程では具体的には扱いませんでした)

 

そういった学び合いなどの授業を取り入れたり、先生の授業力そのものをアップするためにも、まずは、先生の校務などの事務作業を削減し、授業の準備や教材研究、指導力のアップに使える時間を増やす教育政策が必要なのではないかと思います。

 

そして、もう一つ、難易度は高いですが、やると効果がでるだろう施策としては、1学級の人数を大幅に減らすことです。現在、都市部では、30人~40人のクラスがほとんどです。その30人以上もの子ども達を一人の先生で丁寧に見ることはとても困難です。そこで、思い切って15人以下にするのが良い方法だと思っています。海外の学校では、これくらいの少人数でやっているところも多くありますし、15人以下にしたときに、授業の理解度や答えの正答率があがる研究結果もあります。(「グラス・スミス曲線」や「スタープロジェクト」が有名)


社会人がプロジェクトを行う上で、最適なチーム人数は8人だという話を聞いたこともあります。ミーティングでも12名を超えたくらいから集中力が散漫になったり、当事者意識が減るということも。やはり双方向で密度を重視していくなら少人数の方向なのだろうと思います。

 

教育は、その一人ひとりのおかれている状況や個性、これまでの背景やポテンシャルなどにもあわせて授業することが大切だと思うので、究極的には一対一になるのだと思います。ただ、多様な複数人で学ぶメリットも授業の広がりなどを考えても多くあるので、10人~15人くらいがちょうど良いのではないでしょうか。(実際に「東京コミュニティスクール」はこの規模で初等教育を実施しています)

 

と書いてはいますが、この学級の人数を減らすことは、かなりハードルが高い施策でしょう。財務省は現在、子どもの人数が少子化で減るのだから、それにあわせて先生の人数を減らしましょう、と言っているからです。もちろん文科省はそれに反対しています。現在、先生を減らすことに抵抗している状況ですので、学級の人数を減らすということは、先生を増やすということになるので、とても難しい問題だということがわかります。

 

ここまで読んだ方の中には、これまでも現在のような大人数の形式で授業をやってきたのだから、これからもそれで良いのではないかと思う方もいるでしょう。ただ、これまでの時代はそれで良かったからもしれませんが、これからの今の子ども達が大人になり社会に出てくる時代には、そうも言っていられないのではないかと思っています。

 

「今の子供たちの 65%は、大学卒業時に、今は存在していない職業に就く」「今後 10~20 年で、雇用者の約 47%の仕事が自動化される」といった研究発表がされています。

 

これからのAI時代の未来を考えると、これまでの暗記中心の大人数の一斉授業では、未来の社会で生き抜く力はつきにくいだろうと思います。次期学習指導要領の載るアクティブラーニング型授業や学び合いの授業などで、答えのない課題に対して自分の頭で主体的に考え、仲間と協力しあい、試行錯誤を繰り返すような経験を積んでいく必要があるのだと思います。

 

今回記事で書いた、多様な子ども達にどのような授業をしていくのが良いのか、というも問題は、これからも残り続けると思います。特効薬はないにしろ、公立の学校現場の現状の一つとしても知ってもらえたらと書いてみました。また、先生って難しく、大変だなぁと思ってもらい、先生へのサポートが増えていくといいなぁと思っています。

 

そして、今は学校に全く関わっていない人でも、教育に関心を持つ人が増えて、教育政策を意識して選挙の投票に行ってもらえると、教育改革の後押しになり、少しずつでもより良く変化していくのではないかと思っています。

 

これからの社会を生きる全ての人が、教育の当事者だと思っています。

 

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幸せと健康の秘訣は「人とのつながり」 そして「自分とのつながり」

こんなことあった事はありませんか?

 

何か問題が起ったとき、その現象や事象を解決しようと一生懸命になる。早く解決したくて焦る。しかし、なかなか解決されない・・・。

 

しかし、その問題に注目するのではなく、関係性をつなぎ直すことに時間を使ったら、あっという間に問題が解決してしまった。

 

これは、大きな示唆のある話しだと思っています。

夫婦でも、仕事でも、地域でも、問題の多くが「関係性」や「つながり」に原因の発端があると思っています。

 

今回はその「人との関係性」「つながり」について、深めていきたいと思います。

 

人類は「つながり」で生きながらえ、そして進化した

私たちの人類の祖先であるホモサピエンスが、生き延びてきた理由。それは、「つながり」であり、「信頼関係」の中で協力してあってきたからこそ、生き延びてこられました。

 

それは、人間の進化の歴史とも言えます。

「進化人類学における社会脳仮説では、人間の脳が現状のように大きく進化したのは、他者との関係を考慮・管理するためだと考えられている」そう、人間の脳が大きく成長したのは、他の動物よりも利口だったからではなく、ほかの人間の仲間たちと協力し、チームを組むためだったということだ

リッチ・カールガード他(2016)『超チーム力』p.85 

 

ここで面白い研究をご紹介します。

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なんと78年前の1938年から今も続いている、アメリカの「ハーバード成人発達研究

」というものです。この研究は、724人の人生そのものを追跡調査し、「健康で幸せな人生を送るための秘訣」を紐解いたものです。

 

4代目の研究者のロバート・ウォールディンガー教授がTEDx(以下に約12分の映像があります)で語っていますが、その結論は、「身近な人たちとの人間関係の質」が健康や寿命にも、幸せ感にも、脳の老化にも影響を及ぼしているということです。

 

この人間関係の質は、喧嘩をしないことではなく、いざという時に頼れることが大切とのことです。逆に言えば、孤独感は害を及ぼし最も良くないということになり、人は集団の中でも孤独を感じてしまうので、注意が必要になります。

 

ここで一つ思い出したのですが、あるテレビの取材で、ホームレスになった人に、なってしまった原因を聞いたところ、多くのホームレスが家族や親戚、友人がいなかったわけではなく、「助けて」と頼ることができなかった、ということがわかったのです。まさしく大切なのは、関係性の質ですね。

 

ロバート・ウォールディンガー教授は、関係性を良くする秘訣もNHKの番組の中で語っており、「柔軟性を持ち、他人の考えを尊重できること」と言っています。つまり、心の器を拡げて、他者を受容することなのだと思います。これが一番難しいですよね。このことは後半に少し触れたいと思います。

 

www.ted.com

 

さて、この「つながり」の研究について、日本人で有名な方がいます。書籍「友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法」の著者で予防医学研究者の石川善樹さんです。

 

石川さんは、TEDxUTokyo2012の「ほんとうに寿命をのばすのは?!」という講演の中で、「つながりの効果」について語っています。

 

まずはこのデータを観てください。

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ご覧の通り、「つながり」というのは、酒やタバコ、運動や肥満など以上に、健康に影響するがわかったのです。

 

あと、「つながり」は危機の時ほどよくわかります。例えば、入院した時。

入院中にサポートしてくれる人がどれだけいるかで死亡率が大きく違うのです。

 

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心筋梗塞で入院した人の中で、入院中にサポートしてくれた人が誰ひとりいなかった場合の6ヶ月以内の死亡率は69%でした。一方、サポートしてくれる人が2人以上いる人は26%まで死亡率が下がりました。

 

石川さんは、繋がりの秘訣は「人を肯定すること」と言っています。これも先ほどの「心の器を拡げる」ところに近い話だと思います。

 

以下に、石川さんの講演映像(約12分)と書籍をご紹介しておきます。

tedxutokyo.com 

友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法

友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法

 

 

さて、その他にも「つながり」について研究した結果を記載しておきます。

 

30万人以上の患者を対象とした最近のある研究では、社会交流が不充分だと答えた患者の死亡リスクが、充分な社会交流があると答えた患者より50%も高いことがわかった。死亡率を引き上げる要因は、孤独がもたらす悪い影響だという

リッチ・カールガード他(2016)『超チーム力』p.101

 

ウィルコックスは、アメリカで大切とされる“徹底した個人主義”の神話を疑問視するべきだと警鐘を鳴らした。周囲とのつながりがない人間は、自殺する可能性がきわめて高くなる、と。

 くわえて、生理学や行動学の研究、アンケート調査などによると、孤独な若者の睡眠の質が概して低いことがわかった。また、年齢にかかわらず、孤独な人間は免疫反応に問題を持つ傾向が強く、ウイルス性呼吸器感染症にかかる確率が高いという。

 リッチ・カールガード他(2016)『超チーム力』p.102

 

超チーム力 会社が変わる シリコンバレー式組織の科学 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

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  • 作者: リッチ・カールガードマイケル・S・マローン,濱野大道
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ということで、「人との関係性」「つながり」の大切さについては、理解していただけたのではないかと思います。 

 

そこで、現在の私たち「日本人のつながり」はどうなっているのかを少し見てみたいと思います。

 

孤立した日本人 その処方箋とは?

日本では近年、核家族化、地域社会とのつながりの希薄化などが問題視されています。それは各国と比べたデータでも表れています。

 

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社会的孤立が高い日本人。

それは、子ども達の世界でも深刻化しています。

 

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この深刻な日本の現状の中ですが、まずは自分の半径、身近な人とのつながりを見つめ直すのがいいのではないかと思っています。しかし、先ほども書いたように、関係性をより良くするためには、他者を受容し、他者に貢献するために、心の器を拡げる必要があります。(ここからはかなり私の持論が入ってきます)

 

では、どうすればその心の器を拡げることができるのか?

 

そのポイントは、「自分自身を受容し、自分自身とつながる」ことだと思います。

 

自分と深くつながれて、初めて、他者と深くつながることができるのだと思います。

 

もう少し噛み砕くと、つながりを創るためには、他者を理解し受容することが必要になります。それを別の言い方をするなら、「自分のことを理解し、受容しているレベルでしか、他者を理解し、受容することはできない」ということだと思います。

 

私も、少しずつですが、このことを実践してきています。

何年か前の私は、存在価値の怖れから、自分の至らない点や欠点を卑下し、なんとか直そうと努力してきました。その結果、当時、他者の欠点などを見つけた時に受け入れることができず、「貴方も直すべきだ」と厳しくあたる自分がいました。

 

それが、今では、自分の凸凹もそのまま受け入れることができて、他者の凸凹も受け入れることができるようになってきています。「私は私。これでいいのだ~」とバカボンのパパばりに楽天的に受容しています。そうなることで、日々が楽しく、様々な人間関係がよくなりました。(これは怠惰になることとは違うので念のため)

 

最後にまとめますと、他者との関係性・つながりは、健康で幸せに生きる上でとっっっても大切で、関係性を深めるためには、心の器を拡げる必要があり、そのためには、自分と繋がり、自分を理解し、自分を受容することが必要になるということです。

 

 

ちなみに、蛇足ですが、つながりを邪魔し、むしろ分断や対立を起こしやすくしてしまうものに、「不安や怖れ」「偏見や思い込み」などがあります。この辺りも別の機会に書きたいと思います。 

 

蛇足2ですが、上記の領域については、いくつかのコミュニケーションのテクノロジーがあります。その一つが、以前ブログ記事にも書いた「U理論」です。また、仏教などの教えもかなり活用できると思います。

matsuura.hateblo.jp

それ以外にも、とてもオススメの「NVC(非暴力コミュニケーション)」などありますが、それもまた別の機会に書きたいと思います。

 

ではでは~。

 

 

PS.

今回は個人と他者との関係性などについて書きましたが、チームや組織の関係性についても先日ブログ記事を書いているので、よかったら合わせて読んでもらえるといいかもしれません。

matsuura.hateblo.jp

 

組織・チームが新しい変革を実現し、生産性を高めるために必要なこと

今回は、主に組織やチームの中でマネジメントやリードする立場の方向けの記事です。(そして、少し長いです)

さて、今回のお題の「新しい変革と生産性向上」に必要なことを結論から先に言いますと、「多様な組織・チームの関係性を高めて、外から知を持ち寄り、直接の対話で深めていけば、生産性を高まり、イノベーションは生まれやすくなる」ということになるかと思います。

これだけだと、「そんなこと、知ってるし」となると思います。ですが、知ってはいても、実際に実行し、結果を出すことが本当に難しいことを、どなたも実感されているのではないでしょうか。

今回の記事は、いつもの如く自分の備忘録のためですが、最新の研究データなどを書籍から引用していますので、これまで当たり前に思っていたことをさらに深め、応用するのに役に立つかと思います。

【個人】の能力や専門性を高めることには皆さん興味あるところだと思いますが、今回の記事をきっかけに【チーム】の関係性やコミュニケーションに目を向けてもらえると嬉しいなぁと思っています。

 

個人か、チーム(集団)か?

組織やチームのパフォーマンスを語るうえで、一緒に議論にあがりやすいのが「個人のパフォーマンス」だと思います。単純に言ってしまえば、「個人の能力が高まれば、組織全体のパフォーマンスも高まるのではないか」と。また、「能力の高い個人を採用すればいい」と。

それもそうなのですが、スーパーマン的な人を採用することや、スーパーマンに育成するのは本当に困難です。また、スーパーマン的な人だけ集めてもうまくいくとは限りません。

その点で、今回は、多くの企業や団体、個人にとっても、とても希望のある話です。

まずは、チーム(集団)と個人を対比させた研究事例を見てみたいと思います。

サイエンス誌に掲載された論文における重要な結論は、「集団は集団的知性を持つ」というものである。そしてその集団的知性は、個々の構成員が持つ知性とはほとんど関係ない。個人の能力よりも優れた、集団で問題を解決するという能力は、個人の間のつながりから生まれる。特に皆から多様なアイデアを引き出し、共有を促す交流のパターンと、アイデアを精査してふるい分け、合意を形成するプロセスがその中核となる。

アレックス・ペントランド(2015)『ソーシャル物理学』p.11

 

ケロッグ経営大学院の経営戦略論教授ベン・ジョーンズと研究チームは、過去50年に発表された科学研究文献のデータベースを大々的に調査した。
<中略>
複数の科学者から成る研究チームが書いた論文では、個人の論文よりも、常套性はもとより、新規性を含む要素が盛り込まれている率が40%も高いことが判明した。単純に言えば、チームで取り組んだほうが、革新的で新しいアイディアが生まれやすいということだ。

リッチ・カールガード他(2016)『超チーム力』p.122

 

50万以上の特許を調べた結果、個人-とりわけ組織に属さない研究者-が出願した特許には、概して影響力が小さい発明が多いことがわかったのだ。個人の発明家は悪いアイディアを効率的に間引くことが苦手であり、共同作業のほうが"組み合わせ"の機会が増えるため、新規性を生み出しやすい土壌ができることもわかった。

リッチ・カールガード他(2016)『超チーム力』p.123

超チーム力 会社が変わる シリコンバレー式組織の科学 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

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と、まぁ、やはりチームや集団ってすごいよね、と再度思っていただいたところで、ざっくり言うと「組織やチームにおいて、“関係性”って大事よね」というところから入りたいと思います。

 

「結果」ではなく「関係性」の「組織の成功循環モデル」

これをわかりやすく伝えているのが、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している「組織の成功循環モデル」です。組織が成功するためには、良いサイクルを回す必要があるのですが、まずは、悪いサイクルのほうから紹介したいと思います。

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 悪いサイクルは、「結果の質」を求めるところからスタートします。成果・結果がなかなか上がらないと、対立が生じ、押し付け、命令・指示が増えて「関係の質(関係性の質)」が低下していきます。そうすると、命令やプレッシャーを受けるので、創造的思考がなくなり、受け身で聞くだけになっていき「思考の質」が低下してきます。当事者意識はなくなり、自発的・積極的に行動しないので、「行動の質」が低下。行動が伴わなければ、さらに成果が上がらず、「結果の質」は低下。関係性はどんどん悪化・・・・。というサイクルです。

結果から入ったばかりに、悪循環に陥って、突破口が見いだせず八方ふさがり。こういった例は世の中にたくさんあると思っています。

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一方、良いサイクルは、「関係の質(関係性の質)」からスタートします。
まずは、相互理解を深め、お互いを尊重し「関係性」を高めます。そこから、一緒に考えて、気づきや学びが共有され、面白くなっていき「思考の質」が高まっていきます。その過程で、当事者意識も醸成されていくので、自分で考え、自発的にチャレンジ・行動するようになり、「行動の質」が向上します。すると、チャレンジが多くなることで、成功確度が上がり、成果・結果が得られ「結果の質」は向上。信頼関係が高まり、「関係の質」がさらに向上し、もっと良いアイデアがたくさん生まれる・・・。といった、良いサイクルがぐるんぐるんと回り続けていきます。

つまりは、結果(数字)を出すためにも、「関係性の質」を高めていくことが必要であり、実は近道、ということではないでしょうか。

「うんうん。組織もチームも関係性だよねぇ」と思っていただいたところで、次は関係性とは何で、具体的には何をすればいいのか、というところを深めていきたいと思います。

 

関係性を高めて、新しい変革を実現し、生産性を高めるための方法

ここからは、最新の面白い研究についてご紹介したいと思います。MIT教授で、MITメディアラボの創設に関わり、ビッグデータ研究の第一人者で起業家のアレックス・ペントランド氏が行った「社会物理学」の研究です。

ペントランド教授は、「ソシオメトリック・バッヂ」という胸のあたりに装着するセンサーをつくり、声の特徴や身体の動き、相手との位置関係など、1分間に100ものデータを収集し、計測できるようにしました。こうして何年にもわたり、膨大なデータを用いて人々のコミュニケーションを分析した結果、わかってきたことがあります。

そのことは、『ソーシャル物理学(草思社)』という書籍に書いてあるので、そこから引用していますが、本書に「探求」と書いている言葉は、このブログでは「探索(Exploration)」に変更して記載しています。また、この後よく出てくる「アイデアの流れ」とは、「望ましい状態を生み出すための戦略や仕組みが、ソーシャルネットワークを通じて伝播してくこと」と本では説明しています。ちなみに私は、「有益な情報が流れていくのね」というざっくりとした理解をしています。

ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

 

 

この聞き慣れない「アイデアの流れ」についてなのですが、その大切さについてペントランド教授はこう語っています。

こうしたソシオメトリック・バッヂからデータを分析して明らかになったのは、アイデアの流れのパターンそれ自体が、他のあらゆる要素よりも、集団のパフォーマンスに大きく影響しているという点である。
<中略>
個人の知性や個性、スキル、その他さまざまな要素が束になっても、アイデアの流れのパターンにはかなわないのである。

アレックス・ペントランド(2015)『ソーシャル物理学』p.112

 

あと、ペントランド教授は、「アイデアの流れを促進する上で、周囲の人々との接触が、他のどのような要素よりも重要である」と言っています。それは、私達が周囲にいる人たちの行動(規範を示すような一連の行動)に受ける影響の大きさを表しています。無意識にも、私達は、個人として自分自身の経験から学ぶよりも、周囲の行動に倣った方がずっと効率的だということを知っているのです。周りから影響を受けるということは、自分も模範になるような行動を示せば、周囲におのずと影響を及ぼしていくことになります。つまり「背中を見せる」ことが大切ということですね。

ペントランド教授が、複雑な環境における学習を、数学モデルにして確認したところ以下のことがわかったと言います。これも私の経験的に納得するところです。

最善の学習戦略は、エネルギーの90%を探索行為(うまく行動していると思われる人を見つけて真似する)に割くことだった。そして、残りの10%を、個人による実験と考察に費やすのが良いという結果になった。

アレックス・ペントランド(2015)『ソーシャル物理学』p.71

 

最近、本業とは別に、NPOなどにプロフェッショナルボランティアとして働く「プロボノ」をやる人が増えてきていたり、キーワードとして「越境」が出てきていますが、これもペントランド教授のいう探索行為の一部なのだと思います。

さて、ここまで聞くと、「アイデアの流れや探索が重要なのはわかったから、どうやったら高いパフォーマンスが発揮できるの?」という問いが浮かぶと思います。それは、以下のように書かれています。

ウェンと私は、3つの単純なパターンが、さまざまな集団やタスクにおけるパフォーマンスのおよそ50%を決定していることを発見した。最大のパフォーマンス発揮するグループには、一般的に次のような特徴が見られる。(1)アイデアの数の多さ。数個の大きなアイデアがあるというのではなく、無数の簡単なアイデアが、多くの人々から寄せられるという傾向が見られた。(2)交流の密度の濃さ。発言と、それに対する非常に短い相づち(「いいね」「その通り」「何?」のような、1秒以下のコメント)のサイクルが継続的に行われ、アイデアの肯定や否定、コンセンサスの形成が行われている。(3)アイデアの多様性。グループ内の全員が、数々のアイデアに寄与し、それらに対する反応を表明しており、それぞれの頻度が同じ程度になっている。

うん。確かに、パフォーマンスが高いチームっぽいなぁって思うのですが、実際にはこんなにうまくいく場合だけではないよなぁ、なんて考えますよね。まさにそこについても本書で書かれてます。

そのパターンの例外は、ストレスにさらされている場合と、共同作業を行うのが難しく、感情的な反応が起きている場合とのこと。その場合、リーダーが世話人の役割を演じ、他人の会話に頻繁に介入する必要があるということです。

私、個人的には、仕事でプロジェクトを進めていると、このストレスにされされて、人間関係でトラブルが生まれ、感情的な反応が起っている出来事に出会うので、まさにここが突破すべき本丸のような気がしています。ですが、この本ではとくに触れられていないので、今回ではなく、また別でブログに書きたいと思います。

 

生産性と創造性の向上のポイント

さて、ここからは、多くの企業の課題でもある「生産性と創造性の向上」をテーマに、ペントランド教授の研究内容をご紹介したいと思います。このあたりが根拠を持って語れるところがセンサー技術とデータサイエンスの進歩だと思っています。

生産性を左右する最も重要な要素は、従業員同士が交流に費やした時間の合計と、エンゲージメントのレベル(職場の輪に皆が参加しているか)であることが判明した。この2つを組み合わせるだけで、金額換算された生産性の変動の3分の1を予測することができたのである。

アレックス・ペントランド(2015)『ソーシャル物理学』p.117

 

分析の結果、生産性を左右する中心的な要素は、エンゲージメントの程度であることが判明した。エンゲージメントとは、共に仕事をするグループ内におけるアイデアの流れの速さであることを思いだそう。この研究においてエンゲージメントは、従業員が話しかけた複数の相手のそれぞれがさらに互いに話をしているかどうかの度合いから算出された。そして雇用期間や性別といった要素を調整すると、エンゲージメントの程度が高い上位3分の1の従業員は、一般的な授業員と比べて10パーセント以上生産性が高いという結果が得られた

アレックス・ペントランド(2015)『ソーシャル物理学』p.119

 

"ネットワークの形状の変化のバリエーションが豊かなチームほど、創造的な活動の成果に対する自己評価が高いという結果が得られた。言い換えれば、ソーシャルネットワーク内で、探索とエンゲージメントが交互に繰り返されるパターンが見られるほど、創造的な活動で良い結果が出る(少なくともネットワーク内にいる人々からそう評価される)のである。
<中略>
KEYSのデータを分析した結果、創造性が高かった日ほど、より多くの探索とエンゲージメントが行われていたことが判明した。実際、単に探索とエンゲージメントの測定を組み合わせるだけで、どの日に最も創造性が高かったかを87.5パーセントの精度で予測できたのである。"

アレックス・ペントランド(2015)『ソーシャル物理学』p.125

 

以上のことを図にするとこういうことです。

f:id:takaman02:20160517003207j:plain

そして、これに近いことは、経営学の視点から他の書籍でも書かれていたので、ご紹介したいと思います。

弱いつながりの人間関係を多く持つ研究員のほうが、創造性スコアが高くなったのです。他方で、「付き合いの長さ」で測った強いつながりの人間関係を多く持つ人は、むしろ創造性が落ちるという結果となりました。"

入山章栄(2015)『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』p.99

 

「知の知の新しい組み合わせ」すなわち、前々章で述べた知の探索のためには、「幅広い人々からの多様な情報が効率的に流れる」ネットワーク上にいるほうが有利です"

入山章栄(2015)『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』p.98


あと、この本では、「イノベーション」という文脈でいろいろな研究が書かれていたので、少しだけ紹介したいと思います。

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

 

 

イノベーションとは「両利き経営」

世界の経営学で最も研究されているイノベーション理論の基礎「Ambidexterity」は、言うなれば「両利き経営」で、まるで右手と左手が上手に使える人のように、「知の探索」と「知の深化」について高い次元でバランスを取る経営を示すそうです。

「探索した知」の活用方法の第一歩は、情報の共有化で、最先端の組織学習研究で重視されているのが、「トランザクティブ・メモリー」という以下の考え方です。

「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバーが『ほかのメンバーの誰が何を知っているのか』を知っておくこと」であるというものです。

入山章栄(2015)『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』p.113

 

トランザクティブ・メモリーが、グループのパフォーマンスを高めるのですが、効果的な方法は、「直接対話によるコミュニケーション」です。顔の表情や目、身振り手振りなど言語を超えたコミュニケーションの重要性が証明されています。

あと、この本には、イノベーションは、「両利き経営」で、「知の探索」と「知の深化」の両方が必要だと繰り返し出てきます。弱いネットワークで、知の探索だけでなく、それを持ち帰り社内でぐぐっとプロダクトやサービスを深めていく人やチームも必要なるということです。

以上のように、様々な研究・実験結果をご紹介しましたが、結論を端的に示せば、「多様な組織・チームの関係性を高めて、外から知を持ち寄り、直接の対話で深めていけば、生産性が高まり、イノベーションは生まれやすくなる」ということではないかと思います。これは文頭でも書いたことと同じですが、実験結果などを見てみると、深まり方と、取り組む意欲などが変わるのではないかなぁと思います。

少しでも何かお役に立てれば嬉しいです。

次回は、「多様性」や今回の記事に出てきていた「チーム内でのコンフリクトやわかりあえない状況になった時にどうするのか?」というあたりにも触れていきたいと思っています。

 

ではでは~。

 

 PS.

今回は、チーム・組織のつながりや関係性について書きましたが、「個人としてのつながりや関係性は、どう幸せや健康に影響するのか?」という視点でもブログ記事を書いていますので、合わせて読んでもらえるといいかもしれません。

matsuura.hateblo.jp

 

「U理論」の入門をさらに超ざっくりまとめてみました

『U理論』。初めて知ったときに、私が思ったことは「仏教の教えと近い」ということでした。「自分の心を味わう」「真我とつながる」。そんな表現で言われていることと、U理論に共通点を見ていたのです。今回はその「U理論」について少し。

 

英治出版から出版されているオットー シャーマー著『U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』は、608ページもある分厚い書籍となっています。そこで、尻込みをしつつ、中土井僚さん著の『人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門』を手に取るとこれが429ページ・・・。「じゃあ、今度、時間があるときにでも~」なんて後回しにしている方も多いと思います。それでは、勿体ない!ということで、そのU理論入門を、向学のためにもさらに私がざっくりと短くまとめることに挑戦しました。(プレゼンシングまで)素晴らしい理論なので、これで少しでも興味を持ってくださる方が増えると嬉しいなぁと思っています。


※以下の文章は、『U理論入門』で書いてあることだけでなく、松浦の個人的な勝手な解釈や例もかなり入れてまとめています。また引用するかたちもとっていないので、詳しく知りたい方はぜひ書籍や講座を。 

 

U理論とは?

個人の変容や組織のイノベーションのための理論に「U理論」というものがあります。このイノベーションとは何かというと、過去の延長線上にないものを生み出すこと。それを、個人だけでなく、組織や社会でも使える、新しい解決策を生み出すためのプロセスを明らかにしています。それも、指示命令形でなく、チーム一枚岩となってイノベーションを起こすことが、どうしたら可能になるかを示しています。

 

U理論とは、MIT上級講師のオットー・シャーマー博士が世界の多様なトップリーダー達130名にインタビューし、紡ぎ出された理論です。特徴的なのは、リーダーの「やり方(Doing)」に着目するのではなく、リーダーの「あり方(Being)」に着目している点です。人間が、高度なパフォーマンスを発揮し、変革が起こっている時には、内側で「意識の変容」が起こっているというのです。

 

変容を起こすための心構え

現在の世の中は、複雑性が高く、予測の難しい課題に満ちています。こういった課題を解決し、ありたい変容を起こすためには、必要な心構えがあります。それは、非常にあいまい且つ不確実な状況を許容し、失敗を恐れないことと、不可能だと思われることを試みる覚悟です。そして、「何をどうやるか?」ではなく、「その行動をどこからやるのか?」ということです。「どこから」というのは、行動の基点にあたるもので、一つの答えは「源(ソース)を基点にやる」ということになります。源(ソース)を基点に行動しているトップリーダーの共通点として、どんな場面でも「何者としてその場にいるのか?」という「あり方」が体現されているということがあげられます。※後段で、私は、源(ソース)=「本来の自分」とらえています。

 

U理論の3つのプロセス「センシング、プレゼンシング、クリエイティング」

U理論を大きな3つのプロセスに分けると1.センシング、2.プレゼンシング、3.クリエイティングになります。センシングは、「ただ、ひたすら観察する」、プレゼンシングは、「一歩下がって、内省する。内なる知(ノウイング)が現れるに任せる」、クリエイティングは、「素早く、即興的に行動に移す」となります。

このプロセスを文章としてまとめると、「先入観を排し、ただひたすら観察し続けることを通して、行動の基点を源(ソース)に転換していきます。そして、自分自身を通して、出現しようとしている未来(=知っているもの)を迎え入れ、それを具現化、実体化しいく」というプロセスです。

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それでは、このプロセスの第一関門であるセンシング(観察)からプレゼンシングまでを、ポイントを絞ってまとめたいと思います。まず、先入観を排し「観察」をするためには、「過去の経験によって培われた枠組み」を取り払わねばなりません。私たちはこの過去の枠組みから物事をとらえていくので、ありのまま事実をとらえることができなくなり、否定や思考停止などが起こり、不毛な議論や対立に発展していきます。この「過去の経験によって培われた枠組み」こそ、イノベーションや変容の足かせといってもいいでしょう。

 

例えば、初めて会った人と話している時、自分の頭の中で、「ああ、この人はこういう人だなぁ」と興味を失うことがあったとします。この時、過去にできた自分の枠から目の前の人を判断し、レッテル貼りをしている可能性があります。こういったことを私たちは無自覚に多くやっています。こういった認知機能は、生存本能を満たすための脳の機能ではあるのですが、これがあるために足かせにもなっているわけです。他者から「思い込みが激しい」「頭が固い」「頑固」などと言われたことがある人は、改めて考えてみるといいかもしれません。(ここで注意が必要なのは、「過去の経験によって培われた枠組み」が駄目だと言っているわけではなく、その過去の枠組みに「囚われている状態は変容が起きにくい」ということです。)


もう一つ例を使って考えてみましょう。例えば、人と話す時に緊張してしまう人がいるとします。その人の心の声に「どうせ、わかってもらえない」という諦めがあると、話す相手のことをフラットに見ることができず、「この人はわかってもらえない人」というレッテルを貼り、話すことになります。そして、わかってもらえない証拠を相手の言動に見つけ、「ほら、やっぱり、わかってもらない・・・」という諦めの思い込みを強化します。こうやって、ネガティブな思考の渦に巻き込まれていくのです。

 

人は、過去の枠に囚われている状態だと、現実認識が歪み、事実と解釈を混同し、解釈を現実として扱ってしまうことがしばしば起こってしまいます。そうすると、本来持っているパフォーマンスが発揮できません。先ほどの例でも、「どうせ、わかってもらえない」という思い込みがなければ、緊張せず、普通に話ができるはずなのです。この過去の枠であり、思い込みのことを「メンタルモデル」と言います。

 

メンタルモデルを見つけてみる

この思い込み(メンタルモデル)を解消するにはどうしたらいいのか気になるところだと思います。これは、実はシンプルで難しくもあるステップが2つあります。第一段階は、その思い込みや囚われていることに「気づく(アウェアネス)」ことです。これで、メンタルモデルの半分は解消されるともいわれています。自分を俯瞰しているもう一人のメタな自分を置いて、心に起こっている動きや体感に意識を向けると気づきやすいと思います。頭が熱くなったり、胸がぎゅっとなったり、呼吸が浅くなったりと体感で気づくことができます。

 

とくにメンタルモデルがわかりやすい瞬間というのは、他者と関わる中で、「カチン」ときて反応したり、「イライラ」した瞬間です。また、もう一つのヒントとしては、過去から繰り返し起こっている不本意なパターンがないか?を見つめてみると浮かびあがってきます。そして、こういった瞬間に自分の心の声に耳を傾けるのです。おそらくは、相手を責めたり、自己正当化したり、自分を責めたり、卑下したりしていることが多いはずです。中には「こうあるべき」「こうしなければならない」と心の声が言っているかもしれません。こういったメンタルモデルの多くは、「自分は欠損している」「足りていない」などとという思い込みから来ている場合が多くあります。

 

評価・ジャッジ、決めつけなどを一旦「保留」にする

それでは、そういった自分に気づいた後はどうすればいいか。これが二段階目になります。それは「保留」することです。相手を評価・ジャッジ、レッテル貼りしている自分に気づき、正しい・間違っているなどの結論や決めつけを一旦「保留」することです。どこにも着地できない居心地の悪さに身を置き続けることになりますが、それに耐え、能動的に味わうことになります。「待つ」ことともいえます。また、この気づきと保留のプロセスを続けていると、驚きのセンスがあがり、好奇心旺盛で、柔軟な人になっていき、コミュニケーションの質が高まるといわれています。

 

他者の目玉から見て、器を拡張させる

さて、これまでのステップで、ようやく頭の中の雑念に意識を奪われず、目の前の事象や状況に意識の矛先を向けられるようになってきました。そうすると、これまでは過去の枠組みのせいで見えなかったものが、見えてくるようになってきます。他のイメージでお伝えすると、「自分の中に他者の目玉が増える」イメージです。相手を受け入れている状態なので、「○○さんの気持ちがわかった」という実感があるかもしれません。自分の枠が壊れ、器が拡張しています。そうなれば、もう、力でねじ伏せようしたり、自分の主張を飲ませるよう説得する必要がなくなるのです。また、他者のストーリーテリングを聴くことは、他者の人生の追体験をすることであり、他者の目玉が増えるエクササイズだと思っています。

 

Uの谷の「プレゼンシング」

最後は、「U」の谷の部分の「プレゼンシング」についてです。ここでは、創造性を引き出す、根源的な問いが出てきます。それは、「私は何者なのか?また、私の成すことは何か?」ということです。自我(エゴ)や習慣的な「自己」を捨て去り、より高い次元の「自己」とつながります。この自己を「本来の自分(オーセンティックセルフ)」などといいます。この本来の自分とつながり、発せられる言葉は、共振するかのように他の人に響くといわれています。この「本来の自分」とつながり、行動を起こすことで生まれるものがイノベーションであり、変容ということになります。

オットー博士は、この「プレゼンシング」について、「未来が出現する」と表現しており、過去の延長線上にはない、全く新しい可能性を迎えるターニングポイントとなる瞬間といえます。また、この「未来が出現する」前には、不安や怖れに襲われながら、先の見えない虚空に一歩踏み出す勇気が必要となるともいわれています。さぁ、勇気を出して新しい未来を迎えに行きましょう!

 

以上、プレゼンシングまでのところをざっくりとまとめましたが、ここまでが最初の難所であり、かなりポイントになるところだと思い、まとめてみました。お役に立てれば幸いです。

 

U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

  • 作者: C オットーシャーマー,C Otto Scharmer,中土井僚,由佐美加子
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2010/11/16
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人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門

人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門

 

 

マンガでやさしくわかるU理論

マンガでやさしくわかるU理論

 

 

山口 揚平さんの新著「10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと」珠玉の言葉たち

尊敬する山口 揚平さんの新著「10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと」を読んで、とても共感する本だなぁと思ったので感想や、読んで自分なりに考えたことを記載してみます。

 

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この本は、ある青年と成功を収めた紳士が出会い、対話していく形で進められていきます。青年と紳士が対話の中で、人生の本質とは何か?未来はどんな世の中になるのか?ということなどを考えていきます。それを追体験するような形で、読んでいる自分も登場人物と一緒に考えて、本質を掴んでいくシンプルでわかりやすい本です。おそらく読者のメインターゲット層としては、学生~20代中盤くらいまでに設定しているのではないかと思います。

 

本書の内容は、多岐にわたっていますが、どれも外せない大切なことばかり。目次の章だけでも、その一旦は感じていただけると思います。

 

第1章 スノーボールを転がせ! 「学び方を学ぶ」ことが、成功への近道になる
第2章 格差社会と沈む日本を乗り越える 日本解散論
第3章 「作る世界」から「作らない世界」へ 結婚・お金・AI(ロボット)…… 変わる社会の中で生きること
第4章 コミュニケーション 優秀さは謙虚さと能力の掛け算である
第5章 僕たちは何を学んできて、これから何を学べばいいのか
第6章 事業の本質 1人でも食べていくために仕事を創り出す

 

わかりやすい本と書きましたが、内容は「人生の本質」ばかりなので、さらりと紳士が言っている言葉の深さに驚くこともしばしば。読んでいる間、手をとめて「う~ん・・・」と考えこんでしまう時間も多くありました。

 

例えば、本の最後のほうにこんな一説があります。

 「君は今、何をやればいいのかわからない、何を勉強すべきか、どうすればいいのかわからないと、悩んでいるかもしれない。しかし、『人生においてしなければならないことなど何もない』のだよ。何をしたらいいのかわからなければ、何もしなければよい。

 

それでも何かしなければ、と動き出してしまうのは君達が恐怖に立ち向かう勇気をまだ持っていないからだ。私は君のその状態を否定しない。ただ、君は、自分のステージを理解しておくことだ。自己を俯瞰し、自分の感情、自己の本質に目を向けるということだ。大事なことだから、繰り返す。『この世の中に、君の人生に、しなければならないことなど何1つない』。

 

君は、その存在そのものが価値あるものである。それを認めるしか人生の本当のスタート地点に立つすべはない。外の世界で死ぬほど頑張って何億稼いだとしても、この真実、自分の本質的価値に気づかなければ、君は死ぬまで走り続けることになるだろう。内なるバイアス(偏見、他者嫌悪)を癒やせなければ心の平安は得られないだろう。だからこそ青春の本質は自己肯定の内外の旅だと私は言いたいのだ」

 

いかがでしょう。このジワジワくる感じ。本書ではこういった深い言葉が、たくさん出てきます。しかも、さらりと出ていて、細かい解説がされないものもたくさんあります。ですので、読み手によって受け取れる学びに差が出ることが予想される一冊です。

 

ところで、上記の「それでも何かしなければ、と動き出してしまうのは君達が恐怖に立ち向かう勇気をまだ持っていないからだ。」という一文。

私、個人的には、「それでも何かしなければ、と動き出してしまう」というのは、不安や恐れと向き合いたくないから、見たくないから動いているのだと思いました。「何をやればいいか」の裏には「何かやっていないと不安」ということが隠れており、「何かやらないと自分の価値を認めてもらえない」だとか、「他の人間よりも劣ってしまう」などという怖れを持っているのではないかと推察します。

 

だからこそ、怖れを持っている自分に気がつき、動くのを止めて、自己を俯瞰し、自分の感情、自己の本質に目を向ける必要があるのだと思います。ただ、気がつくこと。ただ、観ること。その課程で、上記の文でいう「内なるバイアス(偏見、他者嫌悪)」などをたくさん味わうことでしょう。そうして、辿り着くこと、それが「自分の存在そのものが、価値あるものである」ということだと思います。

 (かく言う私も、まだまだ辿り着いておらず、修行中ではありますので、そういうことではないかなぁ、という感じで主観をお伝えさせていただいております。)

 

という感じで、さらりと深い内容や本質が盛り込まれている一冊です。

 

それでは、最後に、紳士が言った言葉から私に刺さった言葉を書き出してみたいと思います。その言葉を受けての私の感想や刺さったポイントなども記載します。(これは個人的な考えで本書とは関係なく勝手なことを言っているのでご容赦を)

 

健康こそは最大の投資先さ。栄養と健康に関する知識だけは勉強したまえ。結果はだいぶ先になるが、その効果は明白だ。いいかい、21世紀はお金の時代じゃない。時間の時代だ。いや、時間が通貨そのものになるだろう。よく覚えておくといい」(36p)

「健康」こそ私も何より大切と考えています。心も、身体も、健康であること。それ以上はないのではないでしょうか。 そして、「時間」。時間そのものはお金で買えませんが、効率化することによって時間を浮かせることはできます。また、時間は伸び縮みするものだと思っており、集中し没頭すればするほど、時間内でできることは増えていきます。

 

「大企業は特にね。だからベンチャーは、ラッキーなことに古い指標(偏差値)にとらわれることなく、新しい指標、主体性、創造力や直観力、学ぶ技術力、真摯さ、誠実さに基づいて採用することができる」

「主体性としては、まず、悩みの解決はすべて主体的に行なう、ということ。絶対に他人のせいにしてはいけない。実際に問題とは、他人との摩擦が生み出した自分の心の中にある感情のことだからね。(82p)」 

イラッとしたり、悲しくなったり、自分では望んでいない感情が表出した時、人間はすぐに原因を自分の外に見出そうとします。表に出ている現象(行為、行動等)については、外に原因があるかもしれません。しかし、その現象に対して、反応しているのは自分の感情であり、心なんです。 同じ現象、行為や行動を受けても、感情が動かず平静でいる人もいれば、動きまくる人もいるのです。

 

「お金は時間と空間を買うための道具としてのみ使っているよ。あとは社会的価値のある事業への投資に使う」<中略>

人生は与えたものを受けとるようにできている。(110p)」

「情けは人の為ならず」という、ことわざがありますが、まさしくこの言葉と同じことだと思っています。ことわざの意味は、「人に情けをかけるのは、その人のためになるばかりでなく、やがてはめぐりめぐって自分に返ってくる。人には親切にせよという教え。」ということです。ここでのポイントは「その人から返ってくるのではない」ということですね。見返りを期待せず、ただ純粋にギフトや優しさを贈ることによって、いつか自分のところにも戻ってくるよ、ということだと思います。私の大切にしている言葉「恩送り」と一緒ですね。

 

 「大切なのは、善悪も正義もないという前提で生きるということだね。相手が悪い、自分が悪い、ということはない。それは単純に互いのすりあわせができてなかっただけの話だ。そう考えれば気が楽だ。そこからお互いに調整していけばよい。大事なことは自分や相手を否定したり、罪悪感を持ったりしないことだ(132p)」

世の中は、「善い、悪い」「正しい、間違い」「正解、不正解」などの二元論にまみれています。これは、陰陽とは違っていて、対立や争いを生み出してしまう考え方です。陰陽思想は、女と男、月と太陽、光と影、といった形で、二つで一つ、ついになったものであり、対立や争いは生みません。「正しい」「正解」「正義」などは、執着を掴みやすく、固執すればするほど、対立を生み出してしまいます。なぜなら、一人ひとり、自分の世界観の中では、すべて正しい行動や言動をしているのです。つまり、相手も相手の世界観では正しい。ですから、後は自分の世界観と相手の世界観を合わせてくしかないのです。そこに、「善い、悪い」「正しい、間違い」「正解、不正解」を持ち込めば、対立し、相手を傷つけたり、自分を傷つける結果になるだけだと思います。

 

「あとは、「助けて!」と言える相手を持つことかな。損得抜きで付き合える人達を周りに作ること。時間と余裕がある時は功徳を積みなさい。信頼残高が増えるから。(140p)」 

以前、NHKで「助けて」と言えない若者が増えていることを問題にしていましたが、つまりそれは、それだけの信頼関係、深いつながりが作れてない現れだと思います。 深いつながりを作るために一番効果的なのが、人の支援、貢献をすること。徳を積むのも、人の支援、貢献をすること。この世的にも、あの世的にも、素晴らしいのです。

 

「君達が一番戦わなければいけないのは、同調欲求だよ。決して、将来の年金や経済の悪化ではない。自分が他と一緒であろうとするのは一種の弱さだ。違いを愛することが大事だ(147p)」

本来、人は、一人ひとりユニークな存在で、唯一無二の存在です。つまり、一人ひとり違うわけですね。しかし、人はともすると、一緒であろうとする。これは協調性ということと分けて考えないと複雑になると思いますが、例えるなら、「怖れや不安から一緒のように偽ろうとしている状態」 とでもいいましょうか。出る杭打たれる日本なので、打たれることの怖れや、仲間はずれにされる怖れから、「一緒だよ」と偽り、演じるようなことです。「一人ひとり違っていいし、自分は自分らしくていい!」と、確信めいたところまで行かないとなかなか難しいことですが、少しずつでも意識していると変化していくと思っています。

 

「君はまだ理解しきれていないと思う。99.9%の人は、自分とは、自分が考えた思考や感情のことだと思っている。これは根本的に間違いだ。

 それらの感情や思考は「結果」であって、本当の自分とは、それらを生み出している存在のことだ。本当の自分に気づくためには、その背後に意識を向けて、思考や感情を生み出している存在を見つけなければならない。これには時間がかかる。(155p)」

はい。これは難しく、自分もわからないです。しかし、私の言葉にする練習ということでチャレンジしてみます。まず、これは整理が必要で、「本当の自分とは何か?」ということがある程度定義できていないと混乱してしまいます。本当の自分を「魂レベルの自分」と定義すると、その魂が本来望んでいることと違うことを、脳は作り出していることがあると思っています。例えば、魂レベルでは、「自分らしく○をやりたいんだ!」と思っていても、脳の思考レベルでは、「は、リスクが高いし、メリットも薄いからやらない方が賢明である」という具合です。感情でいえば、「○○をしようとしたら、イライラしたから、私にはあわないんだと感じた」というように、感情も、思考も、より深い本来の自分の方向性とは外れて反応することが多くあると思います。というか、それがほとんどだと思います。ただ、「感情」というのは、魂とつながっていて、近いところで表現していることもあると思っていまして、また感情に近い「身体」がそこに共鳴し、信号を出していることも多くある、と思っています。この、「魂」「感情」「思考」「身体」などは、ただでさえわかりくく、私も感覚で体験している最中って感じなので、なんとなくで聞いていただければと思います。

 

「この世には他人など存在しない。他人とは自分の心に生まれた感情の破片に過ぎない。他者嫌悪の本質は自己嫌悪だよ。認められない他人は誰にでもいるが、その存在を認めること。それは自分を認めることであり、それこそが内なる旅だ。(229p)

上記と同じく難しく深い世界ですね・・・。はい。チャレンジ。「自分という存在しか、この宇宙に存在していない」 という量子物理学者の言葉を聞いた気がしますが、そこには踏み込まず、私には、「鏡の法則」や「不二」という言葉がありますが、そちらのほうがわかりやすいかなと思っています。自分の目の前に現れている人も、自分の写し鏡であり、自分の中にあるものが現れている、というようなことだと思います。だから、その鏡である他者にイラッとしたり、悲しくなったりしたら、それは自分の中にあるものが反応していると言えるわけです。つまり、自分の中にあるものが消えてしまえば、他者のそれも消えてしまう。誤解を恐れず、わかりやすく例をあげると、自分を責めている人は、他者を責めるものですが、自分を認めた瞬間から、他者を責めずに認められるようになる、という感じです。自分の存在を認め、愛し、赦すことができたら、他者の存在も認め、愛し、赦すことできる、という素晴らしい真理だと思うのです・・・が、実践は難しいですね。

 

 

以上、珠玉の言葉たちでした。う~ん。例えるなら、ボディーブローのようにお腹にくる感じの、本質に迫る言葉たちです。

 

最後に、私が思う、本書をとくに読んでいただいきたい方は、学生や20代の若者たちです。(もちろんそれ以外の方にもオススメですが)

具体的には、自分たち世代の価値観が変化していることを実感する中で、旧態依然とした学校や企業などに疑問や不安を持っている人。10年~20年の後に、どんな未来が来るのかを予測し、準備をしておきたい人。自分に自信をつけ、人間力を高めるにはどうしたらいいのか、悩んでいる人。暗中模索の就活生。などには、とくにおすすめです。

 

読み終わるころには、「私はこうやって生きていこう!」と、自分の道に光りが差す感じと、背中をおされる感覚のする一冊だと思います。